樫舎の手記

こぼれ話: 2011年8月アーカイブ

海布丸太

 

よしの杖

 

 

日本の文化は 横からの遮光の文化といっても過言ではないと考えます。

屋内において電灯を消して障子からの遮光に目が慣れてくると

菓子だけでなく、器、茶碗、着物、畳の目までもが立体感を増し

一つ一つが本来持っている、(ライティングでは決して太刀打ちできない)

本当の美しさが際立ってきます。

私は、これぞ日本人の根底にある美学と考え遮光に映える菓子を作ることを

大切にしています。しかし、昨今 室内環境は、上からのライティングで

形成され 様々なライトが存在し、色、形、強弱と光の種類は多岐にわたります。

 

これは、現代の建築事情に寄与するところが大きいのですが

時代の流れの前に如何ともしがたいのが現状です。

しかし、吉野にはこんな現代に於いても 日本古来の建築文化を支えている

人々がまだいらっしゃいます。

出来上がった時が、一番いい家ではなく、数十年あるいは、数百年かけて

その家人達と共によりよい家に育てていくことができる家、

そんな本来の日本家屋の材料を作り続けている人達がいます。

 

その一人が 銘木店マルチの御主人 林正武さんです。

茶室などに代表される数寄屋造りといわれる日本建築の材料を作っておられます。

しかし時代のあおりを受け 年々需要は減少し、廃業される方々も少なくありません。

超一流材だけを扱うマルチさんも例外ではなく 大変厳しい時代を迎えています。

「日本の美」 を守るために「文化を守る」ために 建材として流通しない

時代なのであれば新しい使い方を提案してでも流通させなければ 

山が死んでしまいます。

文化がなくなってしまいます。

そんな思いから よしの杖をつくりました。

樹齢十年程度の杉・檜は 極めて目が込んでおり元から末まで落ちが少なく

地上10メートル程の部分を使用しているそれらにすら、すでに何度かの枝打ちのあとが

伺えます。マルチさんの材料らしく本当に手間暇をかけた銘木であることは間違いありません。

 

本来は数寄屋の軒のかけに使われるべき海布丸太を

奈良絵師による正倉院文様などの絵付けを施して

よしの杖として販売しております。

 

マルチ銘木店

http://maruchi-meiboku.jp

 

                         樫舎主人